話題のクラフトコーラ。TAKEOの三橋が趣味で開発したオリジナルレシピを公開します。
スパイスは14種使用、インターネットで公開されているものの中ではいちばんマニアックで複雑で本気なレシピだと思います。
簡単なレシピに飽きた方はぜひ試してみてください。
※趣味のレシピなので昆虫は入っていません。
設計コンセプト
ジンジャーエールでもレモネードでもなく、コーラらしい風味が感じられること。
大人のスパイシーさがありながら、バランスが取れた風味であること。
材料(シロップ200ml、4倍希釈クラフトコーラとして800ml分)
材料A(下準備)
レモン・・・1個
ライム・・・1個
カラメルシロップ・・・三温糖と水を2:1くらいしたものを水で希釈
材料B(シロップ調整)
水・・・200ml
果糖・・・80g
三温糖・・・70g
材料C(抽出①)
レモン絞りかす・・・材料Aのレモン1個分(輪切りにしておく)
GABAN ブラックペッパーホール・・・1g
GABAN ジンジャーパウダー・・・0.2g
GABAN 鷹の爪ホール・・・1本
材料D(抽出②)
GABAN シナモンスティック(セイロン)・・・3本
GABAN カルダモンホール・・・2g(半分に割っておく)
GABAN クローブホール・・・2g
コーラナッツ(粗挽き)・・・1g
GABAN コリアンダーパウダー・・・0.4g
GABAN オールスパイスパウダー・・・0.2g
GABAN ナツメグパウダー・・・0.1g
材料E(抽出③)
レモン果汁・・・材料Aの絞り汁
ライム果汁・・・材料Aの絞り汁
ライムピール・・・Aの絞りかす1/4個分、ピールのみ
S&B 旬の香り 山椒の粉・・・0.3g
GABAN ローリエ(アメリカ産)・・・1枚
レモングラス(自家製)・・・2枚(無くてもよい)
材料F(抽出④)
カラメルシロップ・・・材料Aで作ったもの、薄く着色する程度
ナリヅカ バニラエキストラクト40・・・1.0g
つくりかた
下準備
材料Aのレモン、ライムの果汁をしっかり絞る。
レモンの絞りかすは丸ごと輪切りにしておく。
ライムは外側の果皮だけ1/4個分剥いておく。
普通のカラメルシロップを作る。カラメルシロップは着色よりも風味付けが目的。
三温糖と水を2:1程度で配合し、フライパンで黒くなるまで焦がす。
水を加えて水に溶ける状態まで延ばす。
シロップ調整
鍋に材料Bをすべて加え、よく溶かす。
抽出①
鍋に材料Cをすべて加え、穏やかに加熱する。
沸騰×3分間。
抽出②
鍋に材料Dをすべて加え、穏やかに加熱する。
沸騰×1分間。
その後、レモンの絞りかすを少量残して取り出す。
抽出③
鍋に材料Eをすべて加え、穏やかに加熱する。
沸騰したらすぐに火を止める。
抽出④
必要に応じて、冷蔵庫に入るサイズの容器に鍋の中身をすべて移す。
原料Fをすべて加え、軽く撹拌する。
粗熱が取れたら冷蔵庫で抽出する。たまに撹拌するのが望ましい。
完成
メッシュで濾して完成。
保管の目安は冷蔵庫で1週間程度。
シロップ1:炭酸水3を目安にお好みの濃さで割って召し上がってください。
残った抽出残さは200~300mlの熱湯で再抽出しても無駄なくおいしく楽しむことができます。
苦味や辛味がガツンと来ます。
レシピのポイント、こだわり
■シナモン、バニラ、シトラス
コーラの風味づくりの骨格はシナモン、バニラ、シトラス。この3つを抑えれば大体コーラになります。
コーラナッツは必須でありませんが、入れるとカフェインの苦味のためかコーラらしさがちょっと増します。
シナモンはセイロン、カシアの2種が存在しますが、クラフトコーラにはセイロンがおすすめです。
カシアは甘さが弱く、スパイシーな雰囲気になります。今回はスティックを使いましたが、粉末でもOKです。
バニラはビーンズを使ってもいいですが、ビーンズは高価だし大量に使わないと甘い風味が出ないし品質も安定しないので、コスト的にも技術的にも使うのが難しいです。
今回はナリヅカコーポレーションの「バニラエキストラクト40」を使用しました。本品はマダガスカル産ブルボン種のバニラビーンズを抽出した天然バニラ香料で、風味や品質の安定性に優れ、非常に使いやすいのでおすすめです。バニラの合成香料を使ってもおいしくできるのですが、せっかくのクラフトコーラなので天然にしました。
シトラスはレモンだけでも十分ですが、ライムが加わると本物感が増します。オレンジなどを加えると甘さが加わっておいしいです。
本レシピではレモンの絞りかすを途中で取り出していますが、これは風味調整のためです。絞りかすを長時間漬けていると、苦味が強くなります。もちろんそれはそれでおいしいのですが、苦味によりドリンカビリティが低下します。今回のレシピのコンセプトは「バランス」なので、レモンの苦味を抑えめにしました。
■スパイスの産地、メーカー
その他のスパイスについても品質(メーカー、産地、品種など)には注目することをおすすめします。例えばローリエもアメリカ産、トルコ産などがありますが全然風味が異なります。バニラも色々な産地や品種、グレードがあり、それぞれまったく別物です。
僕は個人的な好みでGABANをひいきにしていますが、例えばS&Bに変えてみても違った雰囲気になって面白いと思います。
■4段階抽出
抽出したい成分に合わせて、今回は4段階で抽出しました。味を濃く出したい材料は加熱を長く、フレッシュな香りを残したい材料は加熱を短くします。
抽出①では、味の成分を抽出します。唐辛子、ジンジャーは辛味を、レモンの果皮は苦味をしっかり抽出します。ブラックペッパーは香りというより辛味目的で使用しているので、抽出①にしました。
抽出②では、比較的安定な香気成分を抽出します。香気成分を揮発させ過ぎないように、1分間穏やかに沸騰させます。コーラナッツは間違えました。カフェインは高温で抽出いやすい呈味成分なので、抽出①で投入すべきでした。
抽出③では、変質しやすい香気成分を抽出します。特にシトラスは熱による変質が起こりやすいです。本当は非加熱が望ましいのですが、日持ちさせるために沸騰させて殺菌しています。
抽出④では、加熱する必要が無い原料を投入します。市販のバニラエキストラクト、自家製カラメルシロップは殺菌されているのでこれ以上の加熱不要です。
■果糖
糖類としては三温糖と果糖の2種を使用しています。三温糖はコクを出すために採用していますが、上白糖やグラニュー糖などに代替可能です。
果糖は冷やしたときに甘さを強く感じられることが特徴の単糖です。これを配合すると冷やしたときにシャープでスッキリした甘さが表現できるのでおすすめです。果糖が入手できないときは130gの三温糖で代替してください。
■シトラスについて
レモンの品種にも念のため注意してください。本レシピでは一般的な酸っぱい品種(ユーレカ種、リスボン種など)をおすすめします。近所のスーパーに売っていたマイヤー種を使ってみたら、想定よりも甘くなってしまって爽やかさが失われました。マイヤー種はレモンとオレンジの自然交雑種と言われており、酸味がマイルドで香りもオレンジのような甘さがあります。
もし甘めのレシピが好きな方はレモンの一部をマイヤー種に変えてみたり、オレンジに変えてみると楽しいと思います。その際は糖を5~
10%程度減らすと塩梅が良くなると思います。
■その他検討したアイディア
カルダモンは人気のスパイスで、市場にあるクラフトコーラはカルダモンを強く利かせたものが多くあります。しかしジンジャーエールのニュアンスが強くなります。本レシピではコーラらしいバランスを目指したので、やや控えめにしました。カルダモンファンの方は量を増やしたり、ホールではなくパウダーに変えると、カルダモンのパンチが楽しめます。
自家栽培のフレッシュホップ(センテニアル種)も本当は使いたかったのですが、レモンピールと同じ理由が苦味が強くなりドリンカビリティが下がるので不採用にしました。ドライホッピングのような使い方をすればうまく使えたかもしれません。
八角(スターアニス)も不採用にしました。重い甘さが特徴のスパイスですが、少量でも全体が重厚な印象に変わります。本レシピでは爽やかさが欲しかったので使いませんでした。
■抜いてもそんなに問題ない材料
原料を増やすと味と香りに複雑さや立体感が増します。より本物感が増し、飲んだときにリッチな気持ちになります。
しかしクラフトコーラにおいてすべての原料が必須であるわけではありません。
ライム・・・抜くとレモン感が強くなるけど、そんなに問題ない。
ブラックペッパー、鷹の爪、ジンジャー・・・抜くと辛味が無くなって物足りなくなるけど、そんなに問題ない。
コーラナッツ・・・抜くとカフェインがなくなって物足りなくなるけど、そんなに問題ない。
コリアンダー、オールスパイス、ナツメグ・・・抜くと雰囲気がシンプルになるけど、そんなに問題ない。
レモングラス・・・抜いても風味変わらない。
■抜いてほしくない材料
シナモン(セイロン)・・・コーラ風味のキモ。これを抜くとコーラじゃなくなる。
ローリエ(アメリカ産)・・・コーラ風味のキモ。トップの香り。
バニラ・・・コーラ風味のキモ。バニリンが少ない甘くないバニラだと意味無い。
カルダモン・・・クラフトコーラ感のキモ。クラフトコーラといえばカルダモン。
クローブ・・・クラフトコーラ感のキモ。スパイス入ってる感じが出る。
レモン・・・爽やかさのキモ。クエン酸だけだとフレッシュ感がなくなる。
目標は伊良コーラ
■完成度は70%
伊良コーラは世界初のクラフトコーラ専門メーカー・専門店で、日本のクラフトコーラの文化の始まりでもあります。僕は伊良コーラの味が一番好みで、このおいしさを目標にしています。現在のTAKEOコーラの完成度は70%。まだまだ発展途上です。
■クラフトコーラの定義と分類
クラフトコーラの定義は開発者によって「コーラらしい風味がするもの」「コーラナッツを使用しているもの」「スパイスが使用されている炭酸飲料」など、色々あると理解しています。僕としては「コーラらしい風味がするもの」と定義して開発しています。
その考え方の違いによって、クラフトコーラ市場にはジンジャーやカルダモンを強調した「ジンジャーエール系」、特徴的なシトラスを強調した「シトラス系」、特徴的なスパイスやハーブを強調した「スパイス系」、コーラらしいバランスの取れた風味がする「王道コーラ系」、があると考えています。
■伊良コーラのすごさ
伊良コーラはこのコーラらしい風味とバランスの良さが最高で、僕は勝手に「王道コーラ系」に分類しています。そのうえでシトラスのフレッシュな香りや苦味、スパイスの辛味などが複雑に感じられ、一口ごとに新しい発見がある飽きないクラフトコーラです。コカコーラやペプシコーラなどのメジャーコーラとはまったく別物です。
スパイスとシトラスの配合・抽出によって、バランスの取れたコーラらしい風味を表現するのはかなり難しいです。伊良コーラはおそらく特別な原料を使っているわけではなく、絶妙な配合・抽出技術によってそれが達成されているものと予想しています。センスというよりひたむきな研究の成果なんじゃないかなと勝手に想像し、勝手にリスペクトをしています。
■その他のクラフトコーラ
すべてのクラフトコーラを飲んだわけではありませんが、市場のクラフトコーラはそれぞれ個性があって非常に面白いです。伊良コーラ以外では、喜界島の「TOBA TOBA COLA」がお気に入りです。スパイスの効いたみかんジュースのような印象で、甘くやさしく安心する味です。ぜひ飲んでみてください。
TAKEOの実店舗で飲めるようになる予定
現在、レシピを改良しつつ店長の三浦みちこにレシピを引き継ぎしています。9月には実店舗で飲めるようになる予定です。
僕としてはふつうのクラフトコーラとして飲んでもらいたい気持ちがありますが、昆虫入りの特別verも提供される予定です。乞うご期待!
【更新履歴】
2021年8月27日 レシピver1.0
2021年8月28日 抽出の考え方を追記
2021年9月12日 シトラスについて を追加